目次
みなさんこんにちは!GPの宮永です。
早くも12月……今年は時間の流れが劇的に早いと思うのは私だけ?
さて、今回のテーマは華々しいファッションシーンについて。今年は新型コロナ感染症拡大を考慮し、ファッションウィークが相次いで中止になったりオンラインに移行したりと、ファッションシーンもてんやわんや。でもだからこそ、面白くなった側面もあったようです。
コロナを皮切りにファッションショーはどう変わったのか?どう対応したのか?ということで、まさに進化の真っ只中、コロナ時代のファッションショーにフォーカスしました!
3密を考慮したファッションショーをどう作るのか
突然ですがブランドの価値ってみなさん何だと思います?もちろん人生いろいろ、意見もいろいろ。
そう、いろいろ(爆)!
とはいえね、その中でも絶対的に無視できないもの。それが“ブランドたる所以”って言うのは、「デザイナーのフィロソフィ」そして「ブランドの持つ世界観」ですよね。そこにみんなが恋をするんです。
年に2回開催されるパリをはじめとしたニューヨークやロンドンで開催されるコレクション、俗に言うファッションウィークは、そのフィロソフィーや世界観を発信するための場。だからこそ、コレクションはブランドからするととーっても大切なものなんですね。で、この世界観なり哲学を、来場者に体感してもらいたいから、各ブランドは力の限りアイデアを絞り演出を考えて(それこそ血も滲みそうなくらい)ショー当日を迎えるわけです。
会場に実際に足を運んでもらい、場の空気と雰囲気とプロダクトを体感してもらう……そう、ライブ感がとっても大切なんです。
しかし、今年はコロナです。これはもう、困った!
彼らのフィロソフィーや世界観を伝える上で、3密は大きな弊害。どうしたら今まで生身で感じてもらっていた世界観を3密回避で伝えることができるのか。そして、共感と感動を与えることができるのか。
しかも今年は突然でした。これはもうね、各ブランドのクリエイティブチーム総出で修羅場だったでしょうね……。
ファッションショーのオンラインイベント化
そんな中スタートした、2020年秋冬のファッションウィーク。丁度ロックダウン直前に開催されたギリギリの中、オンラインに踏み切れなかったブランドが大多数。
それもそのはず。いきなり“じゃ、オンラインで!”って切り替えられる強者なんて、この世にそうそういませんよね?
……でもね、中にはちょいちょいいたんです。
といっても、急は急。ファッションショーをオンライン配信するとか、ブランドのクリエイティブシーンをショー配信と一緒に見せるとか、そういう方向性が多かったように思います。
しかし時間が経過するにつれ、社会がコロナとの付き合い方に慣れていきました。オンラインでの可能性、3密回避の可能性をもっと深く考えることによって、今ある弊害を「面白いことに変えちゃおう!」みたいなアイデアが登場し始めたのです。
流れはファッションショーも同様で、だからこそ、今回の2021年春夏のファッションウィークは面白かった!面白いと言ってもまだ発展段階、間違いなく過渡期なのですが、それもまたまた面白いんですよね。
注目のオンラインファッションショーはこれだ!
ということで、「これは新手なファッションショー」と思ったナイスなショーを共有していきたいと思います。
【ルイ・ヴィトン】デジタルとリアルの完璧なる融合
今回の2021春夏のショーの中で特に注目されたのがルイ・ヴィトンのショーでした。
今回の会場は、LVMHが大規模な改修を進めている老舗百貨店サマリテーヌ。来場者は席につきショーが始まるのを待ちますが、席の半分は空席です。
そりゃそうですよね。飛行機が飛んでないんですもん……行きたくてもいけない……。
しかし、全ての席にはカメラがそれぞれ設置されています。カメラの映像はオンラインの向こう側、本来この席に座るはずだった人のPCに繋がっているんです。つまり、招待者はそれぞれの目線からきちんとショーを見ることができるんです。これってすごいエクスクルーシブ。
ヴィトンレベルになると、ショーに招待される人は本当に限られてきます。とにかくスペシャルなことなんです。このスペシャル感を誰でも見れちゃうオンラインでどう提供するか。その解決策にちょっとフィットしてると思いませんか?
また、会場はデジタル配信用に緑一色に。なので来場者はその瞬間は正直面白みには少し欠けていたらしいのですが、部屋に戻ってデジタル配信を見るとあらびっくり。会場では緑の壁や椅子になっていたところに映像が合成され、モデルが映像の中を歩いているようななんともシュールな作りに。
これはオンラインじゃないと出来ない会場作りですよね。もちろん会場にいた人々は空間に沸き立つピリッとした空気やプロダクトの質感やディテールをちゃんと見ることができている。つまりは、会場にいる人、会場に来れなかった人、デジタル配信の視聴者全ての人々を満足させたショーだっと言うわけです。
流石ヴィトン様。LVMHの長ですね。
【ヘルシンキコレクション】アバターモデルで完全バーチャルファッションショー
フィンランドはIT先進国としても知られています。そんなフィンランドのヘルシンキ・ファッション・ウイークは、まさにITの力を駆使した方法で開催されました。なんと会場は「デジタル・ビレッジ」呼ばれるオンラインプラットフォーム。そう、完璧なるバーチャルが舞台のファッションショーでモデルももちろんアバターを使用。リアルなものは一切なし!
ファッションショーに参加したブランドは3Dデザイナーとともに時間を欠けてプロジェクトを始動。デジタル化したコレクションを3Dスキャンしたアバターに着せてショーで披露しました。
ちなみにこのヘルシンキコレクションで披露されたアイテムは、実際にアイテムをオーダーすることができる他、ゲームやオンラインコミュニティー内でアバター用に購入することもできちゃうんですね。
パリコレとかって煌びやかだけど「これいつ着んねん!?(ツッコミ)」て服たまにありますけど、アバターになら着せられる…!これは新しい市場です。いやしかし、コロナが時代を推し進めますね。あっぱれ。
【バレンティノ】巨大なドレスには美しい映像を
コロナの影響で、やはりお客さんは呼びづらい。ヴァレンティノが2021秋冬オートクチュール・コレクションを披露した場所はイタリアのローマ郊外にある映画撮影所チネチッタ・スタジオ。会場には本当に少しだけしか来客者はいませんでした。しかしそれで良いんです。だってベースにあるのはオンラインでの配信なのですから。
こんな事態ならば、映像に特化しよう。そう腹を括った本ブランドは映像チームにファッションフォトグラファーの大御所ニック・ナイトを起用して幻想的なパフォーマンスをライブ配信しました。
約5mもある極端に大きなドレスを身に纏うモデルや宙からぶら下がりながらポージングをとるモデルなど、ああ美しい。ため息が出そう。と言うか出てる。
ヴァレンティノは数あるファッションブランドの中でも本当に美しいショーを作り上げるブランドです。リアルとオンラインを50/50でやりきろうとすると、どうしても中途半端になってしまいがち。だからこそ今回は、周りのブランドがデジタルとリアルをどう融合させるか苦悩する中、腹を括ってデジタル配信に振り切ったのでしょう。
まるで夢を見ているような気持ちになる映像。しかしそれこそがファッションショーで来場者が体感することなんです。それを生身ではなく映像でもたらしてくれるこのヴァレンティノ。しかも演出が映像でないと映えないものをあえて使うてっところがまたグッときます。
【ディオール】なるほど、これがディオールの世界観か!
前述した通り、ファッションショーってブランドの持つフィロソフィーや世界観を発信するための場です。これが基本。そしてそれを伝える手段はなんだって良いけど、やっぱりリアルだよねと言うのが定説。しかしその定説をひっくり返したのがディオールです。
ミニチュアのクチュールドレスは職人たちの高度な技術の証し。作中セリフは一切登場しないのですが約14分間のミドルムービーもまるで世界にのめり込むかの様に見れる完成度の高い映像作品です。この作品には、ブランドの意思、バックストーリー、フィロソフィー、プライド、技術、プロダクトのデイテール、ブランドの持つ世界観、全ての要素が巧みに組み込まれている。流石。
14分でブランドが視聴者に何を知って欲しいのか、ディオールとはどんなブランドなのかが伝わる上に、心の中に芸術に触れた時のような感動や、ファンタジックな不思議な体験すら与えてしまう。もうとにかくクオリティの高さに圧巻。そして本来ファッションブランドが与えてくれる、美しさへの憧れを改めて気付かせてくれる、そんなムービーになっています。
【サカイ】デジタルではなくリアルで何が出来るかを考える
さて、最後は日本のドメスティックブランド、サカイです。こちらのショーもあっぱれ。美しかったし本当に格好良かった。各ブランドがオンラインに移行する中やってくれましたよサカイは。会場は江之浦測候所です。
現代美術作家の杉本博司が20年を費やして完成させた江之浦測候所は、日本の誇る名建築。光学硝子舞台があり、相模湾を臨む絶景が広がっているなんて景色が有名ですよね。ショー当日はあいにくの雨。しかしこれがまた良い雰囲気を作り出したんですよ。
リアルな場所で3密は大丈夫なの? そう、大丈夫なんです。客席は透明なアクリル板で仕切られたボックスで、それが雨に打たれて綺麗なんですね。筆者は雨の日のビニ傘が大好きなんですよ。ポツポツ雨が透明のビニールに落ちて来る感じ。あれが自分の身を守ってくれる箱バージョンになったって想像してもらえれば良いのかも。
3密回避=バーチャルになりがちなこのご時世、五感で体感してほしいというマインドを貫き、どうやったら3密を回避したリアルなショーを作ることが出来るのか。そしてそれを中途半端でじゃなく素晴らしいものへと昇華できるのか。そう考え、そしてやってのけるのだからこれはすごいことです。そして、間違いなく今回のショーがサカイ史上最も素晴らしいものだったのです。
終わりに
いかがだったでしょうか?コロナ時代のファッションショー事情。人間の頭の中って面白いですよね。壁があったらそれをちゃんと乗り越えて行くんですから。
完全バーチャルショーのヘルシンキ、ファッションの夢を見させたヴァレンティノ。体感を追求したサカイ……。ピンチはチャンスということで、これまた様々なスタイルが飛び出て来ました。しかしまだまだ過渡期です。次のファッションショーはきっともっと完成度が高い面白いものが出て来るんでしょう。なんて淡い期待を膨らませつつ、私たちも面白いイベントを作っていきます!
この記事を書いたスタッフ